2011年06月04日

【洋書・SF】Replayを読んだ

【レビュー】Ken Grimwood著 Replay ★★★★★

5月の連休に読もうかと思って買っておいた本だが、忙しくなって今まで放ったらかしになっていた。ジャンルとしてはSFに分類されているようだが、スターウォーズみたいないわゆる正統なSFじゃない。現実離れした荒唐無稽な設定だけはSF的だが、テーマは深い。前回この本を紹介したときにも書いたが、もともと1987年に出版されたちょっと古い本だが、最近Kindle向け電子書籍として復刊した。こういう点は電子書籍はありがたい。もしかしてと思って探してみたら、実は和訳が出版されていたようだ。翻訳の評判があまり良くないようなので、英語で読んだほうがいいかもしれない。



主人公のジェフが、仕事中に心臓発作を起こして死んでしまうところから物語は始まる。次に目を覚ました時には、ジェフは25年前の学生時代に逆戻りしていた。25年分の人生の記憶と経験を持ったまま、18歳のジェフは人生をやり直す。これから起こる主だった出来事の顛末を知っているジェフは、賭けや投資で財産を築き、全く別の人生を送る。25年後、以前の自分が死んだ同じ日の同じ時刻に、再び発作を起こして死んでしまう。そして、また学生時代に覚醒し、リプレイが始まる。

と、こういう風に書くと、めっちゃSF臭いように見えるが、この本のテイストはあまりSF的ではない。なぜジェフが時間を何度も逆戻りするかという謎は、結局最後まで明かされないが、そんなことはだんだんどうでもよくなって来る。実際、ジェフ自身も最初の数回のリプレイ時には、自分がなぜ人生を繰り返すかの謎を探ろうとしていろんなアクションを起こしているが、何度も覚醒を繰り返しているうちに、運命を受け入れて謎の究明に情熱を失っていく。代わりにジェフは、やはり自分と同じように覚醒を繰り返しているパメラという女性と出会い、共に自分たちの人生の意味を求めて生きていく。

彼らは死んで時間を遡るたびに、以前の人生で築きあげてきたものを全て失ってしまい、覚醒した時点から人生をやり直さなければならない。記憶や経験は彼らの人生を豊かにする一方で、すべてを失った喪失感を背負って生きていかなくてはならない。以前の人生で築いた大切な物 - 子供や家族への愛情、キャリアや友情もすべてリセットされる。自分の記憶の中にのみ存在する愛しいものへの想いを抱えて、孤独と喪失感の中で人生を繰り返していく。

リプレイを繰り返すと共に変化していくジェフとパメラの心理描写は、あっさりしているが深い。まるで著者自身がリプレイを経験しているんじゃないかと錯覚してしまうくらい、真に迫ってくる。そして地味だが感慨深いエンディングを迎える。


関連記事:
連休に読んでみたい本(洋書・SF2編) | Fionの与太話(2011年4月30日)


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2011年05月17日

The Other Lifeを読んだ

【レビュー】Ellen Meister著 The Other Life ★★★☆☆

以前簡単に紹介した本だが、期待していた内容とはちょっと違っていた。主人公のクインが、別の人生を送る自分がいる世界へ迷いこむというパラレルワールドものだが、最後までパラレルワールドの謎は明かされることなく、むしろクインの精神的な成長に主眼が置かれている作品だ。Kindle版が12ドルと、電子書籍としてはかなり高めの設定になっていて、ペーパーバック版よりも高い。ちょっと珍しいかもしれない。でも、日本のAmazonでは未発売(12月の予定らしい)で予約受付だけしている上に1500円以上もするので、Kindle本を買うのが結局一番安上がりだった。



サスペンス調の冒頭シーンの割には、物語は単調に進む。クインがパラレルワールドに入り込む下りは、SFかホラーっぽい様相を呈しているが、その特殊な設定を膨らませることなく、ごく当たり前の設定の一つとして扱われる。そんなわけで、SFファンとしては物足りなさを感じる中途半端な読後感だ。

だが、SF的要素をあえて無視すれば、一人の繊細な女性が心の葛藤を乗り越えていく過程が丁寧に描かれていて、良い作品だ。また、現代のアメリカ社会を切り取ったような人間関係が細かく描写されていて、興味深い。遺書も残さず自殺した母や、妻に先立たれて新しい恋人と付き合い始めた父、同性同士の結婚を決意したゲイの弟、夫との良好な関係を維持しつつネット上の愛人とバーチャルな関係を楽しむ隣人など、なかなかややこしい。

英語は平易で読みやすいが、別の世界の話や過去の回想などが頻繁に混ざり込むので、ちょいとややこしい。短い時間で読みつなごうとすると、今読んでいる場面がどこなのか把握するのに2〜3ページ戻らなければならなかったりして、思った以上に時間がかかった。多分、まとまった時間で一気に読むほうがいいんだろう。


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2011年04月20日

「その男」を読んだ

【レビュー】池波正太郎著 その男 ★★★★★

幕末から明治にかけての激動の時代を生きた剣客杉虎之助の生涯を描いた時代小説だ。巻末に著者自身があとがきとして書いているように、フィクションではあるが実在の数人の人物がモデルとなっているそうだ。物語の最後の部分は、池波正太郎自身の回顧録のようになっていて、著者が子供の頃可愛がってくれた近所のおじいさんのことが描かれている。多分そのおじいさんは実在の人物なんだろう。実際に幕末から明治への時代の変遷を目撃した人たちが、著者の幼少時にはまだ生きていたわけだ。そうした人たちの昔話をもとに著者が幕末を描き、それを現代の私たちが読んでいる。なんだか、歴史の変遷などという大げさなことではなく、幕末を身近に感じるから不思議だ。



池波正太郎は他にも幕末を描いた作品を出しているが、どういうわけかいずれも歴史を敗者の視点から見ている。この作品でも、杉虎之助はまず傾きゆく幕府の隠密に関わり、その後西南戦争に同行し薩摩軍が敗れる成り行きを見守ることになる。歴史というのは勝者の側から書かれるものだが、敗者の視点も面白い。勝者に都合の悪いことも見えてくるし、したがって全体像も見えやすい。

そんなことはともかく、この作品は単純に読み物としても十分たのしめる。幕末は、ただでさえ英雄豪傑を多く出した日本史上もっとも面白い時代の一つだが、これを稀代のストーリーテラーが語るのだから面白くないわけがない。学校の授業で歴史の表層をなぞって、年号と人名ばかり丸暗記していたのでは感じられない、生き生きとした時代を感じられる。



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