《タイトル数が少ない》
この記事によれば、主たる要因が2つ挙げられている。ひとつは貧弱な品揃えだ。当初ドイツのKindleショップは25,000タイトルでスタートした。今ドイツのKindleショップを覗いてみると、なんと75万タイトル以上のドイツ語の書籍があると威張っているが、その多くはいわゆるパブリックドメインの著作権が切れた古い作品のようだ。実際多くの読者が手を出しそうな新刊本は、たいして増えていないようだ。既存のドイツの電子書籍ショップ「buecher.de」が10万タイトルの新刊本を揃えているそうだから、ドイツのKindleはちょっと見劣りするのは否めない。
《値段の問題》
もう一つの要因は、本の値段だという。アメリカのKindleショップでは、同じタイトルの紙版よりも電子書籍の方がたいてい安くなっているし、頻繁にバーゲンにかかる。以前このブログでも紹介したが、目的のKindle本を登録しておいて、目指す値段より安くなったら教えてくれるサービスまであるくらいだ。だがドイツでは紙かデジタルかで本の値段は変わらない。物理的な在庫もなく、店舗を持つ必要もない分、電子書籍は紙より安くてしかるべしという、ドイツ人の合理的思考にはそぐわない現状だ。
記事には書かれていないが、ドイツには書籍の値段に関して妙な法律があるそうで、ドイツ国内では同じタイトルの本は全て同一価格で販売しなければならないそうだ。従って、電子書籍だからといって紙版よりも安い値段を設定することができない。更に妙な話だが、紙の本は一般消費財扱いで、電子書籍はデジタルコンテンツという分類になるそうで、それ自体は納得出来るのだが、ドイツでは一般消費財よりもデジタルコンテンツのほうが消費税(VAT:正確には付加価値税とでも言った方がいいんだろう)が高く設定されている。紙の本の消費税が7%なのに対して、電子書籍は19%も課税されるらしい。売値が一緒なら、電子書籍のほうが余分に税金を取られる分、高く付くことになる。これじゃ、普及しないのも当たり前だ。
《考察》
記事では、現状はともかく電子書籍の将来については結構楽観視している。品揃えは企業努力でそのうち増えていくだろうし、制度上の問題もそのうち改善されるだろうということらしい。紙の本がなくなるわけじゃないし、うまいこと共存していくことになるんじゃないかとまとめている。まあ、税制については日本とはだいぶ状況が違うので、あまり参考にならないかもしれないが、少なくとも値段と品揃えが重要なキーポイントになるのは共通だろう。
この辺は、日本の出版業界にも大きなヒントになるんじゃないだろうか。日本のKindleショップにめっちゃビビっているように見える日本の出版業界だけど、Kindleショップがオープンする時点で、Amazonを凌駕する圧倒的な品揃えと、魅力的な値段設定を実現していれば、それほど恐れることはない。日本でもドイツ同様、思うように日本語のKindleコンテンツが増えない可能性だってある。
とはいえ、Kindleの横着さに慣れきってしまった私としては、日本のKindleショップは大歓迎だ。
参考記事:
ドイツの税制について
Taxation in Germany | Wikipedia
関連記事:
Amazon、ドイツにKindleショップオープン | Fionの与太話(2011年4月22日)
↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!




![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
![]() | ![]() | ![]() |