2010年11月30日

無料電子書籍配信のビジネスモデル

Free-eBooks.netというサイトがある。ちょっと面白い電子書籍配信サイトだ。無料電子書籍の配信をやっているサイトは、やたら沢山あるが、このサイトのビジネスモデルはちょっとユニークだ。今のところ英語の本だけだが、ビジネスモデルは参考になる。

http://www.free-ebooks.net/

Free-eBooks.netのサイト



《電子書籍の値段とフォーマット》

このサイトにある電子書籍は、すべて無料だ。DRMも付いていない。iPad用のEPub形式もあれば、Kindle用のMobiも、PDFも、テキストも、主だった電子書籍のフォーマットはだいたい揃っている。好みの本を見つけたら、自分の読みたい端末に合わせて好みのフォーマットを選んでダウンロードすれば良い。(ただし、当然ながら日本だけでしか流通していないXMDFはサポートされていない。)

どういう本があるかというと、無名の作家志望の人が自分の作品を投稿したものもあるし、他のサイトでも無料で配っているような著作権が切れた古い作品もある。また、電子書籍が普及する以前にベストセラーだったもので、最近はあまり注目されなくなった作品を、著者自身がアップロードしているケースなどもある。誰もが聞いたことがあるような有名作品もあるし、現役の人気作家が書き下ろしの新作をアップロードしていたりする。

《編集者の存在》

でも、投稿された作品をそのままサイトに登録するわけではなく、一応サイトの編集者がすべての作品に目を通し、ある程度以上の質のものだけをリリースしているようだ。だから、とんでもないものはある程度淘汰される。

この手の自主出版的電子書籍配信サイトは他にもいろいろあるが、編集の過程があって、ある程度ふるいにかける仕組みがあるのはちょっと珍しい。他のサイトで主流なのは、ダウンロードも無料だけど、アップロードも無料で自由というスタイルだ。

電子書籍が普及していない日本では、まだ問題になるほどのことではないが、電子書籍というのは本を出版する側のハードルも下げる効用がある。紙の本を出そうとしたら、版を作って、そこそこの部数を印刷・製本して、何らかの流通に乗せて・・・いろいろと手間もコストもかかる。だが、電子書籍を作成しようと思ったら、パソコン1台で事足りる。DRMなど付ける気がなかったらなおさら簡単だ。すると、やたらと自費出版的作品が世に出ることになるが、当然のことながら読むに耐えないレベルの作品や、問題がある表現のものなども垂れ流される事になる。

編集者の質の問題はあるにしても、編集の手が入ることによって、作品の質がある一定以上に保たれる効果が期待できる。どうせ無料で配っているのだから、ひどい作品に当たっても文句を言うなという議論もあるだろうが、それこそ時間の無駄というものだ。このサイトでは、アマゾンのように読者がレビューを書いたり、★の数で作品を評価したりする仕掛けもある。また、各書籍の情報を表示すると累積ダウンロード数も一緒に表示され、作品の質や人気についてある程度の目安になる。

《サイトの仕組み》

書籍ファイル自体のダウンロードや閲覧は無料だが、「寄付金」と称してサイト利用料のようなものを徴収する。それも、書籍をダウンロードしたい読者だけでなく、自分の作品をアップロードしたい作家からも徴収する。読者側には、無料会員のオプションもあるが、ダウンロード出来るファイル形式はPDFとテキストに限定され、数量も1ヶ月に5冊までとされる。Webで閲覧する分には、制限はないが、ここの本のHTML版はレイアウトや文字が非常に読みづらいから、ダウンロードしたくなる。

有料会員になると、すべてのファイル形式のダウンロードが可能になり、また冊数の制限もなくなる。有料会員にはいくつか種類があって、たとえば50ドル払えば終身会員になれるので、以降無制限に利用出来る。38ドルの1年会員、10ドルの1ヶ月会員もある。今ならクリスマス特別割引で25%値引きになっている。寄付金なのに値引きっていうのもどうかとは思うが。

《著者へ寄付》

面白いのは、各作品のタイトルの下に「Donate to Auther」というボタンがついていて、気に入った作品があったら、著者に自分で金額を決めてお金を払うこともできる。もちろん、払わなくても構わない。

Free-eBooks.netは、この読者から著者への寄付金にはいっさい手をつけず、読者のPayPal口座から著者のPayPal口座へ直接振り込まれる仕組みになっている。だから、著者に寄付をしたいと思ったら、最低限PayPalの口座を持っている必要はあるが、これはちょっと面白い仕組みだ。

【まとめ】

なにしろDRMがついていない電子書籍ファイルを広く配信するにはいい仕組みだ。サイト利用料金を徴収するという形も面白い。読者・著者双方のユーザにとって極めて自由度の高い仕組みになっているので、かなりのペースで登録ユーザを増やしている。ビジターが多いサイトだと、広告も募集しやすいだろうし、結果安定収入に繋がるだろう。

無名の新人作家が世に出るきっかけになるかもしれないし、埋もれた名作が見出されることもあるかもしれない。売れっ子作家がこういうサイトでガチンコ勝負するというのも、ちょっと見物だ。本当に作品が良くて寄付をする人が多ければ、中間マージンがない分、出版社を通す通常の販路よりも実入りがよくなる可能性だってある。まあ、実入りが少ないことだって十分あり得るわけだが、それも含めて読者からのダイレクトな反応だ。

懸念があるとすれば、こういうビジネスモデルでやっていけるのかということだが、このサイトも含めて電子書籍配信自体がまだ新しい業態だ。評価ができるようになるまでにはまだ時間がかかるだろう。興味深く見守りたい。


Free-eBooks.netのサイトはこちら


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