ジャンルとしてはスーパーナチュラル系サスペンスといったところだろうか。
『あなたへ、
今あなたが着ている身体は、以前私のものでした。』
ちょっと好奇心を刺激されるこの書き出しに釣られて、一挙に読んでしまった。主人公はミファニー・トーマスという若いイギリス人女性だ。といっても最初は本人は自分の名前すら知らない。これは記憶を失った主人公に宛てた、記憶を失う以前の本人からの手紙だ。つまり、読者は主人公と同じ白紙の状態で手紙を読み進めていくことになる。
ミファニーはイギリスの秘密機関のエージェントだ。何者かに命を狙われていて、何らかの襲撃を受けた結果、記憶を失うことになったらしい。事前にそれを予期していたかつてのミファニーは、記憶を失った自分自身に宛てて手紙を残したのだ。だが、かつてのミファニーにも、誰がどういう理由で彼女を狙っているのかまではわからない。何もわからず、誰も信じることができない状況の中で、記憶を失った彼女はミファニー・トーマスを装い謎に挑んでいく。
と、これだけでもなかなか面白そうだが、それだけじゃない。ミファニーが所属する組織は、超常現象を専門に扱うイギリスの秘密国家機関だ。ポルターガイストやエクトプラズム、狼男やヴァンパイアなど、警察や普通の軍隊じゃ対処できないようなバケモノの類を退治する。ミファニー自身も含めて、エージェントの多くは特殊能力者だ。ヒーローズみたいに妙な能力を持った人たちがやたら出てくる。
そんなわけで、普通のサスペンス小説のつもりで読み進めていくと、「えっ、私(ミファニー)って超能力者なんだ・・・」なんて具合に、主人公と一緒にびっくりすることになる。なかなか面白い手法だ。話の展開はテンポが良く、一つの謎が解明されても、次々と新たな謎が浮かび上がり、飽きることなく最後まで一挙に読める。とはいえ、最後に一連の事件の黒幕が長々と事のいきさつを告白し始めた時には、岸壁で犯人の告白を延々と聞いている2時間サスペンスを見ているような気になってきた。この辺りの描写にはもうちょっと工夫が欲しかった気もするが、全体的にはなかなか楽しめる作品だった。続編に期待したい。
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