2013年01月24日

Gene Mapper(ジーン・マッパー)を読んだ

【書評】Gene Mapper(ジーン・マッパー) 藤井太洋著 ★★★☆☆

遺伝子工学や拡張現実が究極に発展した近未来を描いたSF作品だ。なんともスピード感のある文体で、一挙に読んでしまった。まあ多分それがこの作品の正しい読み方なんだろう。娯楽作品としてはなかなかよくできている。



とはいえ、読後感としてはちょっと物足りない。個性的な登場人物の設定は面白いが、それが十分に生かされていない。肝心の主人公は良くも悪くも平凡な男で、全編を通して受動的だ。まあ、この辺は好みの問題だろう。

目新しい技術用語が次々と出てきて面食らった人も多かったようだが、それによって作品の舞台がどんな世界なのかが描かれている。SF作品に多い手法だが、記述がくどすぎてわざとらしさが前面に出てきてしまっているのがちょっと残念だ。最新のCG映像をこれでもかってほど見せつけられるだけで内容の薄い、最近よくある映画を見ているような印象を持った。

内容とは別にこの作品の特徴としては、最初から電子書籍として書かれていて電子書籍としてのみ、しかもほとんど個人出版のような形で出版されていることだろう。海外ではすでに電子書籍の個人出版でヒットを飛ばした作家が何人も登場しているが、日本では先駆的な作品じゃないかと思う。こういう作品がこれからどんどん出てくることを期待したい。
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2013年01月19日

のぼうの城 上下巻を読んだ

【書評】のぼうの城 和田竜著 ★★☆☆☆

ちょいと前に映画の宣伝をやたら見かけたが、まだ映画は見ていない。とはいえ野村萬斎が「のぼう様」を演じたくらいのことは知っている。作品で描かれている「のぼう様」と野村萬斎のイメージがどうも結びつかないが、あれだけの名優だからきっとうまく演じているんだろう。



そんなわけで本を読んだ印象だけを語ると、読後にほとんど何も残らない。確かに成田長親は戦国時代を小説にするときに光を当てるには異色な人物かもしれないが、脇を固める登場人物も含めて人物描写が浅く、その魅力が描きこまれていない。多少面白く書かれているのは石田光成くらいだが、これもこれまでさんざん語られてきた光成像のステレオタイプを過度に強調した程度の書きっぷりだ。

忍城攻めのエピソード自体はちょっと面白い話なので、描きようによってはもっと楽しめる作品になっただろうに、もったいないことだと思った。というわけで歴史小説のヘビーリーダとしては星一つの判定にするところだが、そこそこヒットした作品を早いタイミングで廉価に電子書籍化してくれたところに敬意を表して、もう一つ星を進呈しよう。
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2013年01月12日

Kindleのアカウント統合で良いこと、困ること

日本のアマゾンがKindleストアをオープンするのを待ちかねて、アメリカのAmazonで電子書籍を買っていた人も多いと思う。私もその一人だが、日本版Kindle発売を首を長くして待っていたので即購入した。当初の大きな懸念のひとつは、これまでアメリカで買いためた電子書籍の数々を、日本版Kindleでも読めるかどうかだったが、Amazonはアカウント統合というソリューションを用意してくれた。

要するにアメリカのAmazonのアカウントと日本のAmazonのアカウントを統合して、どちらのショップで購入したコンテンツもひとつのライブラリーにまとめて扱えるというサービスだ。まあ、Kindleのヘビーユーザには当たり前の話なので、知ってる人は読み飛ばして欲しい。



早速私もアカウント統合をやってみた。統合するにあたっての注意点としては、いったん統合してしまったら、アメリカか日本のどちらかのショップを選ばなければならないという点だ。つまり、たとえば日本を選択した場合、日本のKindleショップからしか電子書籍を購入できなくなり、アメリカ向けサービスのうち日本で提供されていないものは利用できなくなるという不利益を甘んじなければならない。アメリカでしか売っていない本も多いし、アメリカのKindle本はしょっちゅうディスカウントセールや無料キャンペーンをやっているので、それはちょいと困る。

とはいえ、いったんどちらかの国を選択したら変更できなくなるのではなく、簡単な手続きで行ったり来たりすることも可能だ。


《居住国設定の変更方法》

アメリカでも日本でもどちらのアカウントでもかまわないが、アマゾンのサイトにログオンして「My Kindle」(アメリカ版は「Manage Your Kindle」)のサイトを開き「居住国設定」で変更ボタンをクリックすればよい。

ただし、日本からアメリカに変更するときにはちょっとコツがいる。アメリカのアマゾンのアカウントに日本の住所を設定して登録している人も多いと思うが、Kindleの居住国設定を変更する際には、アメリカ国内の住所を登録するように求められる。

アメリカに親類・知人がいる人はそこを使わせてもらってもかまわないだろうが、そうじゃない人はちと困る。私の場合は、かつての勤め先の本社住所を登録していたこともあるが、リストラされて使用がはばかられるということもあり、以前このブログでも紹介した転送サービスを利用することにした。

要するに国外からアメリカ国内向けの通販で買い物したい人向けの転送サービスだが、登録するとアメリカ国内の住所がもらえる。この手のサービスをしている会社はいろいろあるが、探せば登録(つまり住所を貰う)だけなら無料というところもある。

《居住国が日本のままでもできること》

アカウント統合すると、日本で提供されていないサービスの一部も利用することができるようだ。たとえば電子書籍の貸し借りだが、日本のKindleでは利用できないが、アメリカのアカウント経由で貸し借りができるようになっている。今のところ日本語の電子書籍は貸し借りの対象外のようだが、日本のAmazonで買った英語の書籍も貸し借りできるようだ。この機能を使ってアメリカの図書館から本を借りることもできる。

もっとも貸し出し設定は出版元の意図で設定されるのだが、そもそも貸し出しに対応しているコンテンツが多くない - というか人気作品はたいてい対応していないので、それほどありがたみがあるわけではない。


《居住国設定を簡単に変更できても困ること》

私はとりあえず居住国設定をアメリカに設定している。単純にアメリカのアマゾンの方がたくさん本が売っているからだ。たいていの場合円高の効果もあって、向こうの値段のほうが安い。バーゲンや無料キャンペーンも多い。日本の本が買いたいときだけ日本に設定変更して買うというわけだ。だが、困ることもいろいろある。

定期購読の強制解除

日本ではまだ始まってないが、アメリカのKindleストアには雑誌や新聞等の定期刊行物や、定期配信されるブログ等のコンテンツがある。定期購読を設定すると、毎月購読料を勝手に払ってくれてコンテンツが勝手に配信されてくるという、横着者にはありがたい機能だ。しかも、紙バージョンよりかなり安い設定になっている。

アメリカから日本へ居住国設定を変更すると、これらの定期購読が強制的に解約されるという恐ろしい設定になっている。もっとも、またアメリカに居住国設定を戻して、定期購読の設定をしなおせばいいのだが、タイミングによっては同じコンテンツを2度購入することになったり、購読料が二重取りされることになる。


アプリの強制解除

もうひとつ困るのが、スマホやパソコン用にダウンロードして設定したKindleアプリも強制的に解除されてしまうことだ。Kindleの端末を忘れて外出したときや、本につけたメモを編集するときなど、スマホやパソコンのKindleアプリを使うことがあるが、居住国を変更するたびにこれらの端末が解除されてしまうのだ。

その場合IDとパスワードを設定しなおし、コンテンツをダウンロードしなおすという作業が必要になる。どこまで読んだかとか、本につけたメモは同期されるので、それほど困るわけではないが、かなりめんどくさい。




関連記事:
アメリカ限定版Kindleを買ってみた
日本にいながらアメリカの図書館で電子書籍を借りる
posted by Fion at 10:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | キンドル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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